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2004年9月 5日 (日曜日)

ブラフマンの埋葬 - 小川 洋子

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愛することにより、
 
人生は美しい芸術となりえる。 
 
だが、愛するのなら
 
できれば動物よりも人間の方がいい?

 
 
この本はただただ文体と世界観が美しい。(山本容子さんの装丁も美しい。)それだけで楽しめてしまいます。俗にいって物語はなんてことないのですが、楽しめる。そういう作品です。
 
ブラフマンとは何なのか?それは最後までよくわからずじまい。孤独な主人公のにとっては、これ以上のない愛情をよせるペットとなり、幸せを与える存在である。他に彫刻師と店頭の娘と編み物をする老婆、ホルン奏者、等がでてくる。だが、これらの人物が物語の上でブラフマンと深く繋がることはない。ブラフマンと繋がることができたのは、主人公のだけである。ここまでの説明でわかるとおり、この作家さん、村上春樹のようなシンボル的文体を好んでいるかと思えます。

僕は店頭の娘に好意を寄せるが、アプローチが遠回し。伏線のストーリーとまで発展しないのです。そもそも、これは森に住む芸術家たちをもてなすことを仕事としている僕が、ブラフマンというかけがえない存在をとおして、初めて、自ら美しい世界である芸術という何かを生み出そうとしている物語のようです。現代に生きる私たちのほとんどは芸術家のように生活を送ることはなくても、人生そのものの生き方が芸術になりえるーーそれは、人からどう批難されようとも、自分だけが信じるもの(僕にとってのブラフマンという存在)を愛することによってつくりだされるのではないでしょうか?この物語は、そんなことを思わせてくれました。

主人公の僕が、「ブラフマンの埋葬」の後、好意を寄せる女性を愛し、果たして生き方が変わることができるでしょうか?それは、この本では語られません。また、この美しい世界のようで空しい孤独に生きる男の物語は、現代に生きる男であるわたしに何を語っているのだろうか?それも、考えさせられました。(了)

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