« Arvo Part : A L I N A | トップページ | Barry Lyndon (1975) - Stanley Kubrick »

2005年2月12日 (土曜日)

雪沼とその周辺 - 堀江 敏幸

y.jpg

本との出会いはインスピレーションだと思う。装丁やタイトル、そして手にとって第1ページを読み始めた時の印象。自分はそうやって本を見つけて読んでいる。

繰り返し読む本というのは少ない。文章の読みやすさや心に残る印象にもよる。この本は、人によっては読みにくいかもしれませんが、何しろ物語の内容が素晴らしい。「雪沼とその周辺」という架空の世界観と、徹底した三人称で描かれる人々があたかも本当に存在しているかのよう。繰り返し読める愛すべき本です。略して、繰読愛本?

「読みにくい」と言ったのは何故かと言うと、何しろ物語中の語句や人物にかかる修飾部分がすごく長い。でも悪文かというと決してそうではなくて、まさに計算されたレトリックのように思う。自然に、心がゆっくりと、集中して、その世界観に浸透してゆく。このレトリック+徹底した三人称、人によっては読みにくいか押し付けがましいかもしれないけど、慣れちゃえば、その感じ、たまらないですよ。

この一連の短編集全体から、雪沼とその周辺という世界から、何がテーマとなっているか。そこは独立した物語それぞれ違うものがありますが、これら全体から感じるもの。それは古き失われた世界へのノスタルジー感や喪失感ではなく、そこから一歩抜け出て、「それでも人々は生きている」という暖かさ、ユーモア、優しさが感じられます。そこがすごく気に入りました。堀江さんの他の作品、これから読んでみようと思います。

|

« Arvo Part : A L I N A | トップページ | Barry Lyndon (1975) - Stanley Kubrick »

B o o k」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 雪沼とその周辺 - 堀江 敏幸:

« Arvo Part : A L I N A | トップページ | Barry Lyndon (1975) - Stanley Kubrick »