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2009年11月23日 (月曜日)

セバスチャン・サルガド展

salgado.jpg
 
 サルガドの写真に出会うのは、ニューオーリンズのギャラリーで見て以来。10年ぶりぐらい。

 デジタルは使わないと言っていたサルガドも、いまやインクジェットを使っていた。あの真っ黒で重圧な黒はそこにはもうなかったけど、逆光にたたずむ人々の眼のひかりや、ハイライトさえおろそかにしないトーンの美しさはデジタルでも気品を失わずに表現されていた。とても大きなプリントに、黒の額。あくまで技法はトラディショナル。
 
 でもこの人のすごいとこは、技術以上に、経済学者から転職した写真家としての眼にある。まるで”業”を感じるような群衆の写真。絵画のようだけど、神の眼を感じさせる。点のように見える群衆の中の人間ひとりひとりが、集合体となって意思や魂があるような事を彷彿させる。個人のポートレートを見ると、そこにはメッセージのような、その人の眼が自分の眼と会う。力強い写真だ。

 以前は、飢饉の写真とか、残酷な現実の写真を撮る人でもあったけれど、おそらくここ10年で、この人なりの悟りとか決意ができたのだろうと思う。痛々しいだけの写真で飯を食うのはモラル的におかしいと考えたんだと思う。以前のような痛々しい写真は少ない印象を受けた。

 以前の写真のタイトルにあるように、そこには地獄のような場所に生命を受けた人でも、強い意思や希望や、人間としての”Grace”を持って生きている。そしてサルガド自身もそういう尊厳を見つめて写真を撮り続けている。作品から伝わってくるそうした気品がある点に感動する、素晴らしい写真展だった。サルガドがこのままこうしたドキュメンタリーを撮り続けるのか、別の視点になっていくのか、とても興味深い。

 写真展をしめくくる最後の2枚は、アフリカの大地に力強く生きる人々を表現するかのような、住人と雄牛たちの写真だった。

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